特定非営利活動法人 肺高血圧症研究会は肺高血圧症患者とその関係者に対し、啓蒙活動などを通して広く公益に寄与することを目的として設立されました。

疾患編

肺高血圧症

特発性肺動脈性肺高血圧の場合、以前は診断されてからの余命はせいぜい3年弱と言われていました。患者数も極めて少なく、発症率は100万人に2人程度(潜在的患者数はこれよりかなり多いだろう、と推測されます)と考えられます。このため、一般的に医師は教科書で見た程度の知識しかなかったり、実際には患者を診た事がない、というケースが見受けられます。残念なことに治療ができる病院の数も限られています。患者もかかりつけの病院に同じ患者が少ないため、孤独感を持ちがちです。
以前は根治治療といえば肺移植しかありませんでした。ただここ数年で新薬の開発が驚異的に進み、内科治療による延命の可能性が出てきました。また、現在抗がん剤(内服)を含めた数種の新しい薬剤の肺高血圧症への効果が内外で解明されつつあり、今後の適応が強く期待されています。
一般的な病状としては、まず息切れがひどくなり、平地は歩けても階段や坂道を登ることが困難になってきます。安静状態では外見上、特に異常はありません。但し疲れやすい病気であるため、仕事等をさぼっていると誤解されたりすることもありがちです。高校に通っていた患者からは、同級生から病気であることをなかなか認めてもらえず仲間外れにされた、という体験談も寄せられています。早く病気を発見して正しい治療が受けられる環境を整えるという目的の他にも、病気の啓発のための努力が求められています。

1.肺高血圧症のお話

肺高血圧症は、心臓から肺に血液を送る血管(肺動脈)の末梢の小動脈の内腔がせまくなって血液がとおりにくくなり、肺動脈の血圧(肺動脈圧)が高くなる病気です。心臓のなかでも、肺動脈に血液を送る部屋を右心室といいます。この右心室は高い圧力に耐えられるようにできていないため、肺動脈圧の高い状態が続くと機能が低下してしまいます(右心不全)。
長い間の研究で、さまざまな治療薬が試みられていましたが、最近、肺血管を拡張させる薬が開発され、治療効果もあがってきています。肺高血圧症では、心臓や肺、血管で次のような変化が起こっています。(細くなったホースの水を流すためホースをしごいて内部の圧力を上げることにたとえることができます。)
肺動脈性肺高血圧症では何らかの原因で肺の血管内腔がせまくなると、肺を通過する血液の循環が不十分になります。このとき、心臓が血液を十分に送ろうとするため、肺動脈の圧力が高くなります。
肺動脈に血液を送る右心室は、より大きな力が必要(心室の壁が厚くなったり拡張すると心臓の機能が低下します)なために心臓の筋肉を太くして対応しようとします。しかし、もともと右心室は高い圧力に耐えられるようにできていないため、 この状態が続くと右心室の壁は厚くなり拡張し、右心室のはたらきが悪くなって右心不全を引き起こします。

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2.正常な心臓と肺のはたらき

心臓は血液を全身に送り出し、肺は心臓から送られてくる血液に新鮮な酸素を与え、二酸化炭素を取り除く「ガス交換」を行う器官です。
私たちの身体では血液が全身をめぐっています。それにより、身体の各細胞や組織、臓器へ酸素を与え、二酸化炭素を取り除き、常に体内の環境がよい状態に保たれます。

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3.肺高血圧症の種類

肺高血圧症は、原因によって大まかに@〜Dの種類に分けられます。
本サイトで主に紹介する@の肺動脈性肺高血圧症は、さらに細かく分けられますが、どうしてこの病気になるのか、詳しいことはまだよくわかっていません。

@肺動脈性肺高血圧症
原因のはっきりしない特発性肺動脈性肺高血圧症、膠原病、 先天性心疾患などの他の病気に続発して起こる肺高血圧症等に分けられます。

A通常の心臓病による肺高血圧症
B肺の病気や低酸素による肺高血圧症
C慢性血栓や塞栓による肺高血圧症
Dその他の肺高血圧症

4.肺高血圧症になると、どんな症状があるの?

肺高血圧症に特有の症状はありませんが、初期には軽い動作(階段をのぼったり、坂をのぼる)をしただけで息切れをしたり、疲れやすくなったりします。また、病気が進行して右心室の機能に障害が起きてくると、呼吸困難やたちくらみなど、症状も重くなってきます。
子供の場合、遊んでいる時、失神して病気が発見されることがあります。

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